過敏性腸症候群とは
20~30代の比較的若い世代に好発し、はっきりとした原因を特定できないことが少なくありません。命にかかわる病気ではありませんが、1日に何回もトイレに飛び込む、症状が気になり外出を躊躇うなど、社会生活への大きな支障をきたすことがあります。
さまざまな検査を受けても、特に器質的な問題は認められません。
主な原因はストレス!?
ただ、ストレスによって脳下垂体からストレスホルモンが分泌され、これにより腸の働きが低下することでさまざまな症状を引き起こすのではないか、ということが指摘されています。
その他、生活習慣の乱れ、腸内細菌叢の変化なども発症に影響していることが考えられます。
セルフチェック!
こんな症状に
心当たりありませんか?
過敏性腸症候群チェック
過敏性腸症候群のチェックリストです。まずは10問、当てはまるものにチェックを入れます。- お腹の調子が数週間にわたって悪い、痛みがある
- 下痢や便秘が続いている
- 便の形が悪い状態が続いている
- 排便によって、腹痛や腹部不快感が和らぐ
- 1日の排便回数が一定でない
- 排便後も、便が残っているような感じがある(残便感)
- 便秘が続き、排便できた時もコロコロとしたものが出る
- 便に血のようなものが混じっている
- 食事・運動習慣を変えていないのに急激に体重が減った
- 夜中、腹痛で目を覚ますことが多い
1~7に該当する場合には、過敏性腸症候群が疑われます。また8~10に1つでも該当する場合には、大腸がんなど、さらに重篤な病気が疑われます。
いずれの場合も、お早めに当院にご相談ください。
症状により3つに分類
過敏性腸症候群は、その症状の現れ方によって、以下の3つに分類できます。
下痢型
1日3回以上、急激な腹痛とともに下痢があります。
仕事や家事、勉強などの障害となることが多く、精神的に外出が難しくなるケースも見られます。社会生活が制限されることでストレスが増大し、さらに症状が悪化してしまうことも少なくありません。
便秘型
排便が滞り、腹部に不快感があります。また排便できたとしても、コロコロとした硬い便だけが出ることが多くなり、残便感も認められます。
比較的女性に多いタイプです。
混合型
腹痛を伴う下痢と便秘を繰り返すタイプです。下痢型と同様、いつ便意におそわれるか分からず、社会生活に制限が生じることが少なくありません。
診断・検査
問診で症状などをお伺いするだけでは、過敏性腸症候群の診断はできません。似た症状を持つ他の病気を除外するため、血液検査や大腸カメラ検査などが必要になります。
問診
どのような時にどのような症状が現れるか、どれくらい続くかといったことを詳しくお伺いします。
その他、既往歴、家族歴、服用中の薬などについてもお尋ねします。
検査
炎症の有無や程度、感染・貧血・糖尿病の有無などを調べるため、血液検査を行います。また細菌感染の有無を調べるには、便検査が必要になります。
感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、大腸がんなどを除外するため、大腸カメラ検査を行い、診断します。
治療法
食習慣・生活習慣
高脂肪食、食べ過ぎ、香辛料・カフェイン・アルコールの摂り過ぎは控えてください。乳糖不耐症の人は、牛乳・乳製品も控えます。また、低FODMAP食を試すという方法もあります。
適度な運動は、ストレス解消に有効です。無理のない範囲で、楽しみながら継続することが大切です。また喫煙をしている人は、禁煙をしましょう。
その他、十分な睡眠を取り、できる限り規則正しく日々の生活を送るようにしてください。
薬物療法
過敏性腸症候群のタイプ、症状に合わせたお薬を処方いたします。
精神的な要因が症状を悪化させることがあるため、抗うつ薬や向精神薬が有効になることもあります。
低FODMAP食について
近年、過敏性腸症候群の治療において、このFODMAPを多く含む「高FODMAP食」の中から原因となる食品を特定して取り除くという方法が注目を集めています。
※高FODMAP食を摂らず、低FODMAP食だけを摂るというものではありません。詳しくは、ページ下部の「実践の方法について」をご覧ください。
低FODMAP食
- 米、玄米、十割蕎麦、ビーフン、フォー
- 卵、牛肉、鶏肉、豚肉、魚
- トマト、ホウレンソウ、カボチャ、ダイコン、ジャガイモなどの野菜
- 木綿豆腐
- メープルシロップ
- バター、マーガリン
- 緑茶、紅茶
高FODMAP食
- パン、パスタ、うどん、ラーメンなどの小麦粉製品
- たまねぎ、アスパラガス、長ネギ、ニラ、サツマイモなどの野菜
- ソーセージ
- 大豆、納豆、豆乳
- はちみつ
- 牛乳、ヨーグルト
- チョコレート、アイスクリーム
- ウーロン茶
実践方法について
1高FODMAP食の制限(~6週間)
高FODMAP食をできる限り避けます。
これにより症状が改善すれば、高FODMAP食が原因であったと考えることができます。症状が改善されなかった場合には、原因が高FODMAP食以外にあると考えます。
症状が改善した場合には、次に進みます。
2高FODMAP食を1つずつ試す(6週間~)
高FODMAP食の中で、どの食品が原因であったのかを調べるため、高FODMAP食を1つずつ試してみます。症状が現れた場合には、その高FODMAP食が過敏性腸症候群の原因と考えられます。
一通りを試し終われば、次へと進みます。
3原因と考えられる食品を取り除いた食事へ
過敏性腸症候群の原因と考えられる高FODMAP食を使わない食事を摂ります。
多数の食品を取り除かなければならない場合、栄養バランスが偏らないように注意しましょう。